交通事故の被害者となったときのために、覚えておきたい示談書の書き方とは

1.交通事故の被害者になったとき、示談書を作る意味とは

交通事故の被害者となり、車の損壊や怪我などの損害を受けた場合、加害者に対して修理費治療費、また慰謝料などの賠償請求ができます。この損害賠償について、具体的な額や賠償方法などを話し合うのが示談です。

示談には当事者同士で合意を得ることで、スピーディに問題が解決できるという利点があります。示談では基本的に専門家の意見を挟まないため、裁判での解決とは結果が異なることも珍しくありません。しかし被害が軽微な場合など、交通事故の当事者同士で譲り合い、早期解決を図るのも1つの方法です。この示談で得られた合意の内容を、口頭によるだけにせず、書面に整えたものが示談書になります。

口頭のみの示談では、後から何かと問題が起こりがちです。示談をしたその場では、金額について合意していたはずの加害者が、急に態度を変えて支払いを拒否するということもあり得ます。仮に裁判に持ち込んだとしても、加害者が事実を否認し続けた場合、何ら証拠がないために被害者の主張が認められない可能性が出てくるのです。このような事態を未然に防ぐため、示談での合意の内容を書面に残す必要があります。それが示談書を作成する意味なのです。

2.示談書に書くべき内容と、その書き方について

示談書には何をどう書くようにしなさい、と法律で決められているわけではありません。しかし、将来起こるかもしれないトラブルを予防するためには、必ず書いておくべき内容というものがあるのです。

示談書の作成にあたって最低限記載するべき内容は、以下の4つになります。まずは、「示談に関わる当事者(被害者、加害者)の表示」です。次は、示談の対象となる「事故の特定」となります。そして「示談金」についてのもの、最後は「清算条項」です。

これらをさらに詳しく述べると、「示談に関わる当事者の表示」とは、被害者と加害者双方の氏名などを記載するということを意味します。ここで注意が必要なのは、物損事故と人身事故とで当事者が異なる場合があるということです。通常、物損事故の場合は車の所有者が、人身事故の場合は負傷した人が当事者となります。そのため、車の運転者と所有者が別人であるときなど、誰がどの件につき当事者となるのかが複雑となることも多いのです。そのような状況にある場合は、1つの示談書の中に複数の当事者を記載することもできます。

「事故の特定」は、記載するにあたり特に注意が必要な部分です。もしも内容に誤りがあると、示談書そのものの意味が失われることにもなりかねません。くれぐれも正確な内容を記載するよう、気を付けてください。警察が発行した交通事故証明書に基づいて、内容を記載していきましょう。交通事故が発生した日時、場所、被害者の氏名、被害車両、加害者氏名、加害車両を順に記載するのが一般的な方法です。また、これに加えて事故態様(事故の様子、状況)について記載する場合もあります。

「示談金」の部分に記載するのは、具体的な示談金額支払いの期限支払い方法についてです。支払い方法が現金手渡しではなく、銀行振り込みになるときは、振込先の詳細が必要になります。銀行名、支店名、預金の種類、口座番号、口座の名義人を忘れず記載しましょう。

「清算条項」は、示談によって事故に関する当事者間の諸問題は解決されたので、以降は互いに金銭をやり取りすることはないということを表示するものです。予想されるトラブルを防止するという、示談書の目的そのものであり、特に重要な部分になります。ここで気を付けたいのは、交通事故で怪我を負った場合、後遺障害が残る可能性もあるということです。そのような心配があるときには、後遺障害に関しては別に協議を行うものとするよう記載します。

以上の内容に示談書を締結した日付を加え、当事者全員が署名、捺印したものを2通作成してください。最後に割印を押し、被害者、加害者の双方で1通ずつ、それぞれ補完します。

以上が示談書の書き方です。

3.示談書の内容を確実化するためには、公正証書を作成する必要があります

示談書を作成し、署名、捺印を済ませると、原則としてその内容を変更することはできません。示談書に書かれた内容で本当に良いのか、よく考えましょう。もしも少しでも納得できない部分や、それでいいのか不安に思う場合には弁護士に相談してください。また、示談書には強制執行が認められるほどの効力はありません。示談書を交わしてなお、相手が示談金の支払いを渋ったり、拒否するようならば、裁判にもつれこむことになってしまうのです。これでは示談書をわざわざ作成した意味がなくなってしまいます。

相手の態度などを見て、支払いがきちんと行われるのか不安なら、確実に示談書の内容を実行させるため、示談書を公正証書にしておきましょう。公正証書に「示談金が支払われない場合は、強制執行に服する」という文言を加えておくことで、万が一のときには強制執行が可能となります。公正証書の作成については、弁護士か、最寄りの公証役場に問い合わせてください。

4.示談書について少しでもわからないこと、悩むことがあれば弁護士に相談を

いざ事故に遭遇してしまったとき、何よりも大切なのは、落ち着いて状況を把握することです。

まずは警察に連絡を取り、交通事故証明書の発行を受けましょう。交通事故証明書は、示談のためだけではなく、保険金の支払いを受けるためにも必須です。少しでも怪我をした人がいたなら、必ず人身事故として届けます。自分で事故現場の記録を取っておくことも大事です。むち打ち症など後から被害が出てくることもあるため、示談を行うのは事態が落ち着いてからで構いません。

示談書の書き方そのものは、基本的にはそれほど難しいものではありません。

しかし、事故の状況次第では複雑になることもあります。また、後遺障害が残ることが考えられる場合など、うかつに署名、捺印をしてしまうと、後から悔やむことにもなりかねません。示談書の書き方で悩んだり、それぞれの項目について疑問や納得できないことがあれば、まずは弁護士に相談しましょう。